2015年12月1日火曜日

斜視・弱視について。

 斜視とは、左右の目が違った方向を向いている状態の事をいいます。目の位置によって内斜視・外斜視・上斜視・下斜視に分けられます。弱視は、視覚の発達期に
斜視や屈折異常などが原因で視力が未発達の状態のことをいいます。訓練治療により視力が回復し、子供に多くみられる疾患です。



発見のポイント

斜視

・左右の視線が合わない
・遠くを見る時、寝起き、ぼんやりしている時に片目が外れる
・戸外で片目をつぶる、眩しがる
・近くのものを見る時片目が内側による
・横向き、上向き時におかしな目つきになる
・両目が一緒に動かない
・頭を傾ける、顔を回す、顎を上下して見る

弱視

・片目を隠すと嫌がる、動かなくなる
・良い方の目を前にして近づいて見る
・目を細めて見る
・本を読みたがらない、飽きやすい
・上目遣い、横目、顎を上げて見る


子供は、見えにくさを自分から訴えません。日常の子供のサインを

見逃さないでください。



視覚の感受性期間とは?

物を見る環境によって視覚の発達が影響受ける時期を『視覚の感受性』といいます。生後2~4週間は低く、その後次第に高くなり、1歳6ケ月頃がもっとも高く、その後徐々に減り8歳くらいまで続きます。

感受性期間内は環境の影響を受けやすい一方で、治療・訓練効果が期待できる時期でもあります。

早期発見・早期治療が大切です!


斜視・弱視の治療・訓練


斜視

片目だけで物を見たり(抑制)2つに見えたり(複視)しているため、両目の位置を正しくし、両目で物を見る機能(両眼視機能)を育て、維持することを目的に治療・訓練を行います。

抑制を取り除き、複視の自覚を得る訓練や、2つに見えている像を1つにするための訓練を行います。


弱視

矯正視力を1.0以上得ること、可能な限りの両眼視機能を獲得することが目的です。眼鏡装用、アイパッチ、家庭でできる弱視訓練の指導を行います。

アイパッチは、良い方の目を眼帯で隠し、弱視になっている目を積極的に使わせ視力の発達を促す方法です。
眼科では「アイパッチ日記」を付けて頂いています。1日にどれくらいできているか管理し、その後の訓練やアイパッチの方針を検討します。

※小児弱視等の治療用眼鏡は療養費が支給されます。

高木眼科病院提供資料より】


2015年5月23日土曜日

スーパーモグラの視力


『太陽系の第3惑星「地球」。半径約6370Km、赤道部がわずかにふくらんだ回転楕円体である。地上では、遺伝子操作により超能力を与えられたスーパーモグラが地中探査のセンサーとして活躍していた。

2999年12月7日、太平洋の孤島から灼熱の地底目指し、スーパーモグラは出発した。66日後、地球中心部に到達する予定である。30世紀後半、人工オゾン層の機能が異常となり、地上に降り注ぐ太陽エネルギーが減少、地球は寒冷化に向かっていた。地中からULF(超低周波)電磁波放射が人工オゾン層に与える影響を疑うプロジェクトチームは地底の探査を開始した。このスーパーモグラは時速4Kmという人の歩く速さと同じ速度で地中を進むことが出来、4×10の6乗気圧の圧力に耐え、6000度という猛烈な温度も平気である。そして地球の核から、はるか6千Km遠方の地表を見通すことも出来る。



そのころ、孤島の周辺では31世紀を迎えるモニュメント制作が最後の段階に入っていた。直径5海里、幅1海里(約1.8Km)の巨大なドーナツに1海里の切れ目が入ったモニュメントは、アルファベットのCに似ている。眼科の視力検査に使われているランドルト環とよばれるものだ。しかし、ただのモニュメントではなく、実はULF受信のためのループアンテナであった。 




12月中旬、38万Km彼方、地球の衛星である月の通信基地から完成したばかりのモニュメントを倍率60倍の小型双眼鏡で眺めている一人の隊員がいた。彼は太平洋に浮かぶドーナツ状のアンテナを見つけると、さらに1海里の環の切れ目が北を向いていることが確認できた。
2月11日、スーパーモグラは地中の様々な観測データを集め、核の中心に到達、記念すべき日となった。400万気圧という猛烈な圧力とは裏腹に、そこは白色の無重力の世界であった。そこからスーパーモグラは洋上を見上げ、ランドルト環の切れ目が北の方向を指していることを確認した。・・・』
視力は2点を2点として分離することの出来る最小の角度の逆数で表わされます。この最小分離角が1分(60分の1度)を見分けることの出来る能力を視力1.0と定めています。海上で使われる距離の単位「1海里」は、地球の中心から角度1分の地表の距離です。即ち、1海里を地球中心から見分けるスーパーモグラの視力は1.0となります。一方、月面基地の隊員は双眼鏡で地球までの距離の60分の1に接近し、地球の半径とほぼ同じ距離(38万Km÷60=6330Km)の上空から環の切れ目を判別していることになり、視力は1.0となります。

2015年3月9日月曜日

VDTと目の疲れ



1 はじめに
 VDTとはVisual or Video Display Terminalの略です。コンピュータのモニタ用ブラウン管、データ入力を行うキーボード、プリンタなどを含むこれらの端末機器の総称です。近年、これらの端末機を使いながらの仕事の方が、一般事務より目を酷使する機会が多くなりました。長時間継続すると、全身の疲労症状を来し、症状の蓄積から病的疲労に移行し、複雑ないわゆる不定愁訴をもたらします。ここでは眼を中心に、症状、労働衛生について述べてみます。



2 VDT症候群
 VDT作業を行い、いろいろな不定愁訴を訴える患者を米国では通俗的に「VDT症候群」と呼んでいます。また、VDT症候群のうち、眼の不定愁訴のことを「テクノストレス眼症」と呼ぶ人もいます。
2.1 VDT症候群の症状
2.1.1 
 疲れ、視力低下、かすみなどが主で、眼科的には眼精疲労、近視、乱視、結膜炎、角膜炎、
麦粒腫、眼圧上昇、涙液分泌障害、網膜障害がある。
2.1.2 頚肩腕障害
 肩こり、首が痛い、手のしびれ、腰が痛む、頭痛、背筋痛がある。
2.1.3 精神神経疲労
 精神疲労、単調、追われる、思考がうまく展開しない、空しい、人との疎外感、孤独、依存性がある、不安、うつ、心身症、自律神経失調症などがある。
2.1.4 その他
 婦人科に関する問題に生理不順、流産がある。
以上、VDT症候群の文献に記載されているものを示した。


2.2 VDT VDTと近視
 30歳代、40歳代にも近視の進行があるという報告があります。近くを見る作業と近視、眼の疲れ、調節筋の緊張などがその原因です。ピントを合わせる筋が安静のときが正視の人では無限大ではなく、眼前67cm前後にあることが証明されています。目が疲れたら、遠方をぼんやり見るのではなく、67cm前後の調節安静位置に焦点を合わせることが、目の疲れをとることになります。
2.3 眼の 眼の神経系とVDT
 VDT作業後は瞳孔が小さくなります。つまり、眼のピント合わせのとき縮瞳(瞳孔が小さくなる)しているため
眼の疲れを訴える症例があります。VDT作業ではブラウン管、キーボード、書類と交互に眼球を運動させる必要があり、このときは輻輳((ふくそう)といって近距離のある一点を見つめたときに両目が鼻側に寄る機能が伴っています。VDT作業では頻繁に眼球運動を行い、しかも大きな輻輳で行うため目が疲れます。
2.4 妊娠 妊娠とVDT
 サンフランシスコで1583人の妊婦を調べたところ、外で仕事を持つ女性はどの職種でも、在宅女性より流産率が高い。VDTで週に20時間以上作業している女性の流産率は他の職業よりもさらに高く、1.8倍に達することが明らかになりました。(News Week, June 30, P47, 1988)。


3 VDT VDT VDT 症候群予防のための労働衛生上の指針
 VDT症候群が発症しないように予防するためには、何よりもVDT作業の労働環境の整備と労働衛生環境が必要です。19851220日、労働省労働基準局発第705号「VDT作業のための労働衛生上の指針について」があります。これはあくまでも指針で、法律ではありませんが、目に関する事項を中心に概説します。
3.1 作業環境管理
3.1.1 照明および彩光
 室内はできるだけ明暗の対照が著しくなく、まぶしさを生じさせないようにする。陰画表示CRTディスプレイを用いる場合の画面照度は500ルクス以下、書類およびキーボード面における照度は300
ルクスからおおむね1000ルクスとする。直接太陽光線が入射するなどの高輝度の窓については、ブラインドまたはカーテンなどを設け、必要に応じてその輝度を低下させることができるようにする。
3.1.2 グレア(まぶしさ)の防止
 CRTディスプレイは、作業者の視野内に高輝度の照明器具、窓、壁画や点滅する光源などがなく、かつ、CRTディスプレイ画面にこれらが映り込まないような場所に設置する。映り込みがある場合には必要に応じ、次の措置を講じる。
) CRTfィスプレイ画面の前後の傾斜の調整を行う。
) 低輝度型照明器具を使用する。
) CRTディスプレイにフードまたはフィルターを取り付ける。または反射防止型ディスプレイを用いる。
3.1.3 VDT機器の調整
 CRTディスプレイ、キーボードなどに関して細かな記載がなされているが、最近の機器の進歩を考えるとあまり問題はないので省略する。


3.2 作業 作業管理
3.2.1 1日の作業時間など
 VDT作業に常時従事する者については、視覚負担をはじめとする心身の負担を軽減するため、VDT作業以外の作業とのローテーションを実施することなどにより、1日のVDT作業時間が短くなるように配慮することが望ましい
3.2.2 連続作業時間など
 VDT作業に常時従事する者にとっては、1連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業時間までの間に10・・・15分の休止時間を設け、かつ、1連続作業時間内において、1・・2回程度の小休止を設ける。
3.2.3 休憩のとり方
 VDT作業と休憩は虹彩の中にある瞳孔括約筋による縮瞳はピント合わせがなくなっても瞳孔の大きさは小さく縮んで元に戻るのに15分くらいかかるということである。つまり、副交感神経の強い緊張が見られることである。米国のNIOSHの勧告でも、1時間のVDT作業に15分の休憩が理想としている。


3.3 健康 健康管理  VDT作業常時従事者に対しては、次のように健康管理を行う。
3.3.1 健康診断
 VDT作業に新たに従事する者(再配置の者を含む)の配置前の健康状態を把握し、その後の健康管理を行うこと。
) 業務歴の調整
) 既往歴および自覚症状の有無の調査
) 眼科的検査:視力検査、眼位検査、調節機能検査、眼圧検査
3.3.2 健康診断結果に基づく事後処置
 配置前または定期の健康診断によって早期に発見した健康阻害要因を詳細に分析し、有所見
者に対して次に掲げる保険指導などの適切な処置を講じるとともに、予防対策の確立を図ること。愁訴の主因を明らかにし、健康管理を進めるとともに、職場外に要因が認められる場合についても必要な保険指導を行うこと。視力矯正が不適切な者、特に強度の近視、遠視、乱視の者には適正視力でVDT作業ができるように、必要な保険指導を行うこと。VDT作業を続けることが適当でないと判断される者やVDT作業に従事する時間の短縮を要すると認められる者などについては健康保持のための適切な処置を講じること。
3.3.3 健康相談
 VDT作業従事者が気軽に健康について相談し、適切なアドバイスを受けられるように、健康相談の機会を設けるように努める。
3.3.4  職場体操
 VDT作業常時従事者については、就業の前後または就業中に体操を行わせることが望ましい。
3.3.5 労働衛生教育
 労働衛生管理のための諸対策の目的と方法をVDT作業従事者に周知することにより、職場における作業環境、作業方法の改善、適正な健康管理を円滑に行うため、およびVDT作業による心身への負担の軽減を図ることができるよう、必要な労働衛生教育およびVDT作業の習得訓練を行うべきである。


「まとめ」
かつて、白黒テレビが家庭で普及しはじめた頃、テレビと目の関係が眼科的に大きな話題になりました。しかし、現在ではテレビと「目の疲れ」についてとやかく言う人はあまり多くありません。文明の発展と人間の関係はこのようなもので、VDTにも言えるのではないでしょうか。情報社会の進展に比例してコンピュータは不可欠の世の中となり、職場はも
ちろんのこと、家庭ですらVDTを使用する頻度は増え続けています。企業職場を見ていると、目の疲れは当然と思わせる現状があります。職場の環境整備やVDT機器の進歩、労働衛生教育によって、早いうちに、ある一定の制限内であるならば、VDT作業が目に悪影響を与えず、楽しくVDT作業ができるようになることを望んでいます。 【高木眼科病院提供資料より】