視覚は多くの情報を提供してくれますが、最も多くのトラブルに悩まされてい る感覚器官でもあります。現代社会からもしも眼鏡が無くなれば、どのような 生活を強いられるでしょうか。読み書きに不自由し、車の運転もできなくなり 、日常の生活が困難となります。眼鏡なしでは、現代の高度な文明を築き上 げる事はできなかったでしょう。眼鏡には大きな文化史的な意味があります。 紀元前、エジプト、ローマ、ギリシャの文明には視力補正用器具はまだあり ませんでした。当時を物語る資料として、マルクス・トルリウス・キケロ (B.C.106~43年)が彼の友人アティクスに書いた手紙に、老齢になって自分 では読書ができないために、奴隷に読ませて聞き取らねばならないことを嘆 いた諦めの告白があります。キリストの生誕後、ローマの著作家ガユース・プ リニュウスは皇帝ネロが闘技者の試合をエメラルドを通して見物していたこと を報告しています。この引用文からローマ皇帝ネロは近視で、凹型に磨いて あるエメラルドを通して試合を見ていたことが推察できます。さらに、プリニュウ スの本の中でネロは次のように言っています。「眼に対してエメラルドの色より も快適な色はない。エメラルドは眼の疲れを回復させ、エメラルドの快い色は 視力を強化する」。皇帝ネロがエメラルドを用いて太陽の眩しい光を防ぐように していたという別の記述もあります。古代においてもレンズは知られていたよう ですが、屈折異常の矯正の為よりも、景色に色をつけて見る為に用いられてい ました。
様々な資料より、最初の眼鏡は13世紀末に現れていて、それまで眼鏡は発明されて いなかった、と考えられています。・・続く(参考図書 :W.POULET /ATLAS ZUR GESCH ICHTE DER BRILLE) |
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